恋愛について ジャン=リュック・ナンシー
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つまり、「あなたが好きだ」は相手に愛を与えることを約束する言葉であると同時に、相手の愛を求める言葉でもあるのです。なぜなら、「愛においては、与えることと求めることははっきり区別することはできない」*3からです。「あなたが好きだ」はそのような二重性を持った言葉なのです。 愛を存在させるために人は愛を告白する
それならば実のところ、片想いをしている人はその相手に「あなたが好きだ」と言うべきなのではないでしょうか。というのも、たとえば片想いをしている人がいてその相手がその人を好きになってくれないのは、相手がその人のことに興味がなかったり嫌いであったりするからではなくて、もしかすると自分のうちにある「他者を愛することができる可能性」に気が付いていないだけであるかもしれないからです。 長所とか特徴というのは相手の一種の所有物であり、これを愛するということは、相手が存在しているということを愛するのではなく相手が所有しているものを愛するということになります。(…中略…)その作り上げられたイメージは、「やはり実際の本人からは離れてしまって、そうするとギャップとか葛藤とかが生じ」*11てきます。(…中略…)実際の相手を愛するとき、愛そうとしているときには実際の「相手はイメージの方に向かい、イメージは実物へと返ってい」*13きます。そうして、その両方は互いに修正されていきます。片想いにはこの修正がありません。(…中略…)ナンシーは人を愛するにはあることをする訓練が必要であるとも言います。そのあることとは「相手について自分が抱いている強烈なイメージと実際の相手とのあいだを行きつ戻りつすること」*14です。
ある人を本当に好きであるとき、「その人が外見にせよ内面にせよ何かを持ってるから好きなのではなく、ただその人に存在していてほしい」*15から好きなのだとナンシーは言います。(…中略…)そして、ナンシーは、どれぐらい愛しているかを気にしているときは実は「本当に愛し合っていないとか、ただのいい友達どうしでしかない」*18とまで言います。(…中略…)「あなたはあなた唯一の存在する価値を持つんだよ」ということを相手に知らせること、それが本当に愛するということです。*21